2017年01月29日

上映スペースのためのテーブル

2017年はベルカを開業して10周年を迎え、11年目に入ります。
まだ達成できていない目標が多くありますが、応援していただいたお客様や関係者の支えでこれまで続けてこられました。
今後ともベルカをよろしくお願いいたします。

昨年の話になりますが、民俗学系の映画を製作されているささらプロダクションさんから、上映スペースに設置するテーブルを大小複数台オーダーいただきました。
既存のイージーチェアの高さに合わせたテーブルの設計ということもあり、事前に現場へお伺いさせていただき採寸をしたり協議しながら1センチ単位で各々のテーブルのサイズを検討していきました。

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天板は何枚かの板をはぎ合わせて作りますが、今回は運よく幅広のチェリー材を多く入手することができたので、全てのテーブルを3枚ハギで製作することができました。
1枚板のテーブルが最も素晴らしいとは言いませんが、はぎ合わせる枚数が少ないほど無垢材特有の存在感や表情の豊かさは増していくと思います。

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板をはぎ合わせる際には、互いの板に溝を掘って「雇いサネ」という木を入れる「雇いサネはぎ」をしています。
今回雇いサネにはウォールナットを使いました。

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仕上がった状態のテーブルです。強度を増すための雇いサネが黒いポイントとして意匠的に表れています。雇いサネのような根拠があるデザインが個人的には好きです。

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はぎ合わせて接着をしているところ

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↑は脚と脚をつなぐ幕板という部材で2方向から脚に差し込まれます。
テーブルのサイズに合わせて脚の太さを変えているため、テーブルごとに構造は少し違います。
大きなテーブルであったり、太い脚で長いホゾが作れる場合はこのように2枚ホゾにすることが多いです。

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当然、脚の中に入ってしまえば見えない部分です。

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それほど大きくないテーブルで細い脚の場合だと長いホゾが作れないため、↑のように脚の内部でほぞ同士を組む構造にしています。

完成したテーブル↓
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サイズ:2400×800高さ660ミリ ブラックチェリー材 ウレタン塗装
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ベルカではテーブルに関してはウレタン塗装をお勧めしています。
ウレタン塗装であってもオイル塗装のような濡れ色っぽい質感を出す特殊な塗装方法をしています。


大深
posted by ベルカ at 18:09| 家具製作

2016年12月21日

折敷とスツールA

前回の続きで、スツールbst-2についてです。
これはベルカを開業したての頃、あるお客様からのオーダーがきっかけで開発した商品です。

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スツールbst-2

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まずは角材の状態の脚にホゾ穴をあけます。丸脚なので↓の写真の貫(脚と脚とを繋ぐ部材)が数ミリほどそのまま脚の中に入る穴を開け、さらにそこからホゾが入る穴を開けます。精度良く加工すれば強度的には強いです。

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次に貫にホゾ加工をします。脚の割れ防止や強度的な理由から2段にしています。

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このように加工して貫同士をクロスさせると

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このようになります。クロスさせている部分はクリ小刀を使い綺麗につながって見えるように削り合わせます。

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ホゾ穴を開けた角脚を丸脚に加工します。
旋盤というロクロのような回転する機械を使い、高速回転する脚材に専用の刃物を当てて削っていきます。
昔はホゾ穴が空いたままの材を旋盤で削ると失敗して台無しにすることもありましたが、数をこなして慣れたので今はもう失敗することはありません。
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丸脚に貫を差し込むとこのようににつながります。

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↑接着した状態。ちなみに、このクロスさせる構造はそこまでの強度はないので、最終的に座面に埋め込んだ専用のナットに向かって貫の下側からボルトで接合することで強度を保っています。スツール以上の高さや大きさがある物には別の構造で作る必要があります。

ここからが少し手間のかかる作業です。
座面はお尻になるべくフィットするように湾曲しています。
脚と貫のセットは座面の裏側に接合されるので、脚貫の上部は座面裏の曲面にぴったり合うようにしなければいけません。
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最終的な仕上がりはこのようになります。

脚と貫の上部は計算上出した角度であらかじめ角度をつけて切り落としていますが、現物にあてがうとまず合っていません。
そこで座面裏に荒い番手のサンドペーパーを貼り付けてゴシゴシと脚貫セットを削っていきます。この作業が地味に時間がかかります。
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何かもっと効率的な方法がないかと作るたびに考えますが、今のことろこのやり方にしています。

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座面の曲げ木加工では自作の木型を使いプレスして作ります。
年々改良してきたので最近は精度が出る木型になってきました。

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次に座面作りです。ベルカでは縫製がなければ椅子張りもやっています。
座面はファブリック張りで、内部には2種類のクッション(当たりが柔らかい素材と耐久性がある素材)を張り付けています。
↑の写真では専用の接着剤を塗ったところなので青い色がついています。


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座面表側に先ほどのクッション材を張り付けてひっくり返した状態

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椅子生地を張った座面裏側。楕円形で曲面がきついので裏側にシワが出ないよう布のひっぱり具合を調整しながら溝にタッカーの針を打っていきます。タッカーの針が見えると残念なのでロープを回してきれいに仕上げています。

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ウォールナットでの作例。
今回作ったスツールは初期の作品であまり効率的でない構造をしています。
時間をかけている部分は見えないところばかりでパッと見では特徴のないシンプルなスツールです。
最近はもう少し手間をかけている部分がお客さんに伝わる製品にしなければと意識が変わりました。

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お送りしたところ折敷ともにとても喜んでいただけました。


大深
posted by ベルカ at 09:39| 家具製作

2016年12月15日

折敷とスツール@

7年ほど前から毎年何かしらベルカの商品を買ってくださる常連のお客様がいらっしゃいます。
今年もスツールbst-2とセミオーダーの折敷を注文いただきました。

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折敷は5年ほど前に商品化していたもののHPに掲載していなかった商品です。オリジナルのサイズは30センチ幅×43センチですが、今回は15センチ幅×45センチの細長いタイプで直接お料理を盛り付ける用途でオーダーをいただきました。
去年すでに一つ納品させていただいたのですが、気に入っていただきブラックウォールナット材での追加注文です。

工程としては、まず材料を仕上がりの厚みより5〜6ミリくらい厚い状態にし、1ヶ月以上乾燥させます。
乾燥が終わったら、仕上がり一歩手前の厚さに板を加工し、板同士を耐水性のある接着剤で接着して一枚の盤にします。
今回はチェリー材と山桜材でオリジナルサイズの折敷も一緒に製作しました。
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接着前

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接着中。この後規定の厚さに仕上げます。

無垢材は空気中の水分の影響を受け絶えず伸縮を繰り返しています。
折敷の両端には反り止めの桟がつきますが、板の伸縮を完全に止めてしまえば板が割れてしまうので、伸縮を妨げないように反り止め桟と板は片アリという方法で接合します。
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アリ溝の穴加工が終わった反り止め桟

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次に板の両端にアリを作ります。↑はアリ加工時にバリが出ないように予め繊維を断ち切っているところです。

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アリ型をした高速回転する刃物でアリ加工。少しずつ慎重に削ってはアリ溝にあてがい、ちょうど良い締め込み具合になるまで繰り返します。

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板に反り止め桟を差し込んだ状態。叩き込んでやっと入るくらいキツく接合されています。
それでも将来的にゆるくなって取れてしまわないように伸縮を妨げない位置に裏側から竹釘を打っています。

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↑面取りをしたもの。両端の桟の裏側には指が入りやすいように斜めにカットしています。
この後、水拭き→研磨を数回繰り返して将来的に毛羽立ちが出ないようにし、最後に塗装をして完成です。

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長くなってしまったのでスツールは次回の記事にします。


大深

posted by ベルカ at 22:43| 家具製作

2016年07月05日

ダイニングチェアbcd-3

先日、ダイニングチェアbcd-3を県外のお客様のお宅に納品してきました。

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この椅子はウィンザーチェアという17世紀からあるタイプの椅子で、ほとんどの部材が旋盤(ロクロのような機械)で作った棒で構成されているのが特徴です。

途中から写真を撮ったので、最も手間のかかる座面を彫る過程は紹介できません。
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大雑把な工程ですが、まずは座面用の厚い板に型板を使って墨付けをし、スピンドルという背もたれの棒が入る穴や脚が入る穴をドリルで開けます。一本ずつ角度が違うので間違えないように慎重に開けます。

次に座面を専用の反り鉋で彫り、外周を成形したりします。上の写真は脚を打ち込んで接着した後です。
脚は座面の下から差して込んで、ホゾを貫通させた状態で座面の上からクサビを打ち込んでいるので脚が抜けにくい構造です。
完成すれば、クサビは↓の写真のようにアクセントになります。
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↑スピンドルという部材。この椅子は座面以外全ての部材にあえてカンナの削り跡をつける仕上がりにしています。
ベルカで作っているほとんどの製品はツルツルになるまで時間をかけて研磨した物が多いので、意外とこういったタイプの仕上がりのほうが手間としてはかなり楽です。

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背もたれの一番上に着く笠木という部材にドリルで穴あけをしています。座面に開けた穴とは角度が違います。
初めて試作をした際には、何か色々と慣れない数式を使って角度を導き出した覚えがあります。

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笠木への穴あけが終わったら、仮組みをします。

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仮組して問題が無ければ先ほどの笠木を成形します。これも小ガンナや南京鉋を使って削り跡を残しつつ滑らかな曲線に仕上げます。

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↑組み終わってオイルで仕上げた状態。
この椅子はクッションを敷かなくても疲れないというコンセプトの元に試作を重ね完成しました。
お尻と腰へのフィット感には自信があります。工場には試座用の椅子を常時用意していますのでダイニングチェアを探されている方はどうぞお気軽にご連絡ください。


大深
posted by ベルカ at 21:27| 家具製作
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