2016年12月21日

折敷とスツールA

前回の続きで、スツールbst-2についてです。
これはベルカを開業したての頃、あるお客様からのオーダーがきっかけで開発した商品です。

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スツールbst-2

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まずは角材の状態の脚にホゾ穴をあけます。丸脚なので↓の写真の貫(脚と脚とを繋ぐ部材)が数ミリほどそのまま脚の中に入る穴を開け、さらにそこからホゾが入る穴を開けます。精度良く加工すれば強度的には強いです。

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次に貫にホゾ加工をします。脚の割れ防止や強度的な理由から2段にしています。

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このように加工して貫同士をクロスさせると

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このようになります。クロスさせている部分はクリ小刀を使い綺麗につながって見えるように削り合わせます。

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ホゾ穴を開けた角脚を丸脚に加工します。
旋盤というロクロのような回転する機械を使い、高速回転する脚材に専用の刃物を当てて削っていきます。
昔はホゾ穴が空いたままの材を旋盤で削ると失敗して台無しにすることもありましたが、数をこなして慣れたので今はもう失敗することはありません。
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丸脚に貫を差し込むとこのようににつながります。

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↑接着した状態。ちなみに、このクロスさせる構造はそこまでの強度はないので、最終的に座面に埋め込んだ専用のナットに向かって貫の下側からボルトで接合することで強度を保っています。スツール以上の高さや大きさがある物には別の構造で作る必要があります。

ここからが少し手間のかかる作業です。
座面はお尻になるべくフィットするように湾曲しています。
脚と貫のセットは座面の裏側に接合されるので、脚貫の上部は座面裏の曲面にぴったり合うようにしなければいけません。
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最終的な仕上がりはこのようになります。

脚と貫の上部は計算上出した角度であらかじめ角度をつけて切り落としていますが、現物にあてがうとまず合っていません。
そこで座面裏に荒い番手のサンドペーパーを貼り付けてゴシゴシと脚貫セットを削っていきます。この作業が地味に時間がかかります。
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何かもっと効率的な方法がないかと作るたびに考えますが、今のことろこのやり方にしています。

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座面の曲げ木加工では自作の木型を使いプレスして作ります。
年々改良してきたので最近は精度が出る木型になってきました。

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次に座面作りです。ベルカでは縫製がなければ椅子張りもやっています。
座面はファブリック張りで、内部には2種類のクッション(当たりが柔らかい素材と耐久性がある素材)を張り付けています。
↑の写真では専用の接着剤を塗ったところなので青い色がついています。


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座面表側に先ほどのクッション材を張り付けてひっくり返した状態

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椅子生地を張った座面裏側。楕円形で曲面がきついので裏側にシワが出ないよう布のひっぱり具合を調整しながら溝にタッカーの針を打っていきます。タッカーの針が見えると残念なのでロープを回してきれいに仕上げています。

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ウォールナットでの作例。
今回作ったスツールは初期の作品であまり効率的でない構造をしています。
時間をかけている部分は見えないところばかりでパッと見では特徴のないシンプルなスツールです。
最近はもう少し手間をかけている部分がお客さんに伝わる製品にしなければと意識が変わりました。

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お送りしたところ折敷ともにとても喜んでいただけました。


大深
posted by ベルカ at 09:39| 家具製作

2016年12月15日

折敷とスツール@

7年ほど前から毎年何かしらベルカの商品を買ってくださる常連のお客様がいらっしゃいます。
今年もスツールbst-2とセミオーダーの折敷を注文いただきました。

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折敷は5年ほど前に商品化していたもののHPに掲載していなかった商品です。オリジナルのサイズは30センチ幅×43センチですが、今回は15センチ幅×45センチの細長いタイプで直接お料理を盛り付ける用途でオーダーをいただきました。
去年すでに一つ納品させていただいたのですが、気に入っていただきブラックウォールナット材での追加注文です。

工程としては、まず材料を仕上がりの厚みより5〜6ミリくらい厚い状態にし、1ヶ月以上乾燥させます。
乾燥が終わったら、仕上がり一歩手前の厚さに板を加工し、板同士を耐水性のある接着剤で接着して一枚の盤にします。
今回はチェリー材と山桜材でオリジナルサイズの折敷も一緒に製作しました。
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接着前

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接着中。この後規定の厚さに仕上げます。

無垢材は空気中の水分の影響を受け絶えず伸縮を繰り返しています。
折敷の両端には反り止めの桟がつきますが、板の伸縮を完全に止めてしまえば板が割れてしまうので、伸縮を妨げないように反り止め桟と板は片アリという方法で接合します。
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アリ溝の穴加工が終わった反り止め桟

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次に板の両端にアリを作ります。↑はアリ加工時にバリが出ないように予め繊維を断ち切っているところです。

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アリ型をした高速回転する刃物でアリ加工。少しずつ慎重に削ってはアリ溝にあてがい、ちょうど良い締め込み具合になるまで繰り返します。

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板に反り止め桟を差し込んだ状態。叩き込んでやっと入るくらいキツく接合されています。
それでも将来的にゆるくなって取れてしまわないように伸縮を妨げない位置に裏側から竹釘を打っています。

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↑面取りをしたもの。両端の桟の裏側には指が入りやすいように斜めにカットしています。
この後、水拭き→研磨を数回繰り返して将来的に毛羽立ちが出ないようにし、最後に塗装をして完成です。

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長くなってしまったのでスツールは次回の記事にします。


大深

posted by ベルカ at 22:43| 家具製作
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